訪問看護の生産性を「1人あたり営業利益」で考える訪問看護ステーション経営の新しい視点

訪問看護ステーション経営で、経営者が見るべき数字は何でしょうか。

売上、利用者数、訪問件数、稼働率など、さまざまな経営指標があります。もちろん、これらの数字は重要です。

しかし、訪問看護の経営を本気で成長させるのであれば、もう一つ重要な数字があります。

それが、「1人あたり営業利益」です。

訪問看護は、人が中心となるビジネスです。看護師やリハビリ職が訪問することで売上が生まれます。そのため、職員1人がどれだけ売上を生み、そこからどれだけ利益を残せるのかを考えることが、訪問看護ステーション経営のポイントになります。

今回は、訪問看護の生産性を「1人あたり営業利益」という視点から考えてみます。

訪問看護では「1人あたり売上」だけでは不十分

訪問看護ステーションの経営では、「看護師1人あたり月100万円の売上」といった指標が使われることがあります。

これは非常に分かりやすい数字です。

例えば、1人あたり月間売上100万円なら、年間売上は1,200万円になります。

しかし、売上が1,200万円あったとしても、そのすべてが利益になるわけではありません。

看護師の給与、社会保険料、福利厚生、車両費、通信費、システム費用、事務所費用など、さまざまな経費が発生します。

だからこそ、

「1人あたり、いくら売り上げたか」

だけではなく、

「1人あたり、いくら営業利益を生み出したか」

まで見る必要があります。

1人あたり年間300万円の営業利益という考え方

元記事では、一つの経営モデルとして「1人あたり月間売上100万円」という基準が紹介されています。

年間売上にすると、

100万円 × 12か月=1,200万円

です。

ここから人件費などを差し引いていきます。

例えば、平均年収を700万円とし、福利厚生などを加え、さらにその他経費を考慮すると、1人あたりの年間コストは約903万円という試算になります。

すると、

1,200万円-903万円=297万円

となります。

つまり、1人の医療職が年間で約300万円の営業利益を生み出すという考え方です。元記事では、このモデルの営業利益率を約24.8%としています。

もちろん、これはあくまで一つのモデルであり、実際の利益率は人件費、加算、訪問件数、地域、管理コストなどによって変わります。

重要なのは、具体的な数字を使って、

「職員1人を採用すると、会社にどれだけ利益を残せるのか」

を考えることです。

100人の組織になれば利益を生み出す力が変わる

この「1人あたり年間約300万円」という考え方を組織づくりに当てはめてみます。

100人なら、

300万円 × 100人=3億円

300人なら、

300万円 × 300人=9億円

500人なら、

300万円 × 500人=15億円

という利益創出能力になります。

もちろん、実際には組織が大きくなるほど、本部機能、管理者、採用、教育、システムなどのコストも増えるため、会社全体の営業利益が単純に人数比例するわけではありません。

それでも、

「1人を増やすことで利益を生み出せる組織」

をつくることができれば、採用と組織拡大が、そのまま事業成長につながっていきます。

これは訪問看護ステーション経営を「小さな事業所の運営」として見るのか、それとも「大きな組織をつくる事業」として見るのかという、大きな違いです。

訪問看護の生産性を上げるには人件費を削るだけではない

「利益を増やす」と聞くと、人件費を削ることを考える経営者もいるかもしれません。

しかし、訪問看護では人が最も重要な経営資源です。

給与を下げれば、採用競争力が落ちたり、離職につながったりする可能性があります。

大切なのは、人件費を単純に削ることではなく、職員1人あたりの生産性を高めることです。

例えば、

  • 訪問ルートを最適化する
  • 移動時間を減らす
  • 記録時間を短縮する
  • ICTを活用する
  • 管理業務を標準化する
  • 営業活動を仕組み化する
  • 教育を仕組み化する
  • 加算を適切に取得する

といった改善があります。

こうした小さな改善の積み重ねが、最終的に「1人あたり営業利益」という数字に表れてきます。

「訪問件数を増やす」だけが生産性向上ではない

訪問看護の生産性を考えるとき、単純に「1日に何件訪問できるか」だけを見るのも危険です。

訪問件数を増やしすぎれば、移動時間や記録時間が増え、職員の負担が大きくなる可能性があります。

大切なのは、

「無理なく働きながら、1人あたりの利益を高める仕組み」

です。

例えば、訪問エリアを整理するだけでも移動時間を減らせる可能性があります。

また、記録や情報共有をICTで効率化すれば、現場スタッフが本来の訪問業務に使える時間を増やすことができます。

経営者が現場の努力だけに頼るのではなく、生産性が自然に上がる仕組みをつくることが重要です。

訪問看護ステーション経営は「人を増やせば利益が増える」仕組みをつくる

訪問看護の特徴は、設備を大量に必要とするビジネスではなく、人の働きによって売上をつくるビジネスであることです。

そのため、

1人あたりの売上を高める

↓

1人あたりの営業利益を高める

↓

同じ仕組みで人を増やす

という流れをつくることが、事業拡大のカギになります。

訪問看護ステーション経営では、「何人採用できるか」だけを見るのではなく、

「採用した1人が、どれだけ利益を生み出せる組織なのか」

を見る必要があります。

訪問看護ステーションは競合がいないと言われる理由

訪問看護市場への参入を考える経営者にとって、もう一つ重要なのが市場そのものの見方です。

「訪問看護ステーションは競合がいない」という言葉があります。

もちろん、地域によっては複数の訪問看護ステーションが存在し、競争があるケースもあります。

しかし、今後の在宅医療・在宅介護の需要を考えると、単純に「競合が多い市場」と捉えるだけではなく、地域の医療・介護ニーズに対して、十分な訪問看護サービスを提供できているのかを見ることが重要です。

だからこそ、病院や介護事業を経営している方が、新たな事業として訪問看護を検討する価値があります。

特に、すでに医療・介護のネットワークを持っている事業者であれば、地域の医療機関やケアマネジャー、介護事業所との関係を活かせる可能性があります。

これからの訪問看護経営で重要なのは「利益を生み出す組織」

訪問看護ステーション経営で重要なのは、単に売上を大きくすることではありません。

大切なのは、

「1人あたり、どれだけ利益を生み出せるのか」

という視点です。

1人あたり年間売上1,200万円。

そこから必要なコストを差し引き、年間約300万円の営業利益を生み出す。

このような生産性を一つの目標として、採用、営業、教育、ICT、訪問ルート、管理体制などを改善していく。

そして、その仕組みを1人、10人、100人と広げていく。

これができれば、訪問看護は単なる一つの事業所ではなく、大きな組織へ成長できる事業モデルになります。

これから訪問看護への参入を考える経営者にとって、「売上」だけを見るのではなく、「1人あたり営業利益」を見ること。

それが、強い訪問看護ステーション経営をつくるための重要な考え方です。

※本記事の収益モデルは、元記事で示されている一つの試算をもとにした考え方です。実際の営業利益は、地域、職員構成、給与水準、加算取得状況、稼働率、管理コストなどによって変動します。